(ヒルガタ)ワムシの特徴

ワムシ系統樹
乾眠動物におけるヒルガタワムシの立ち位置

乾眠能力は動物界のうち、4つの分類群ー緩歩動物(クマムシ類)、節足動物(昆虫・エビ)、線形動物(線虫)、輪形動物(ワムシ類)ーで観察されています。このうち、クマムシ・昆虫やエビ・線虫はすべて脱皮動物(Ecdysozoa)という大分類に区分けされ、ワムシ類だけが螺旋割動物(Spiralia)という離れたグループに分類されます。

 近年の研究は少なくともこの4つのグループは進化上、独立して乾眠能力を身につけたことを示唆しています。たとえば、節足動物と線形動物は乾眠時にトレハロースを大量に蓄積し、これが乾燥耐性に重要であることが示唆されていますが、クマムシ類ではトレハロースの蓄積はごく僅かであり、ワムシ類では検出されていません。トレハロース合成酵素遺伝子自体も節足動物は祖先動物から引き継いでいますが、そのほかのクマムシ・線虫・ワムシ類は祖先動物由来の遺伝子を失っています。線虫では代わりに細菌の遺伝子を獲得(水平伝播)することでトレハロースの合成を可能にしています。クマムシでは限られた系統が独立に水平伝播で合成遺伝子を獲得していますが、トレハロース合成酵素を持たない種も乾眠することができます(Hara et al., Open Biol, 2021)。代わりにクマムシは、固有の耐性タンパク質を進化させていることが明らかになってきています。

 では、ワムシ類はどういう仕組みなのでしょうか?
ーーー それが全然分かっていないのです。乾眠動物の中で進化的に最も離れたヒルガタワムシ類の耐性遺伝子を解析することで、動物の乾眠能力を支える分子基盤の共通性と多様性を明らかにできるのではないかと考えています。